ニコラス・ムガヴェロの『800万部の白鯨』は、全1,000ページが灰色のテクスチャーで構成されたユニークな書籍である。この本は、ヘルマン・メルヴィルの『白鯨』のタイトルページを模倣して設計されており、読者はページをめくりながらテキストの欠如に戸惑う。ページには言葉はなく、代わりに「ツイード」や「波」のように見えるパターンが繰り返される。著者はこの反復を通じて、読者に試練を与え、モビー・ディックのテーマやストーリーを再解釈させる。読者はキャプテン・エイハブのように、果てしない答えを求める旅に翻弄され、最終的には成果のない無駄な探求に気付く。ムガヴェロは、読者がこの試練を通じてどのように感じ、思考するのかを巧みに探求している。