本記事では、ROC曲線下の面積(AUC)を直接最大化するROC-SVMという手法について述べられている。この手法は、クラス不均衡の状況下における従来の二項分類の魅力的な代替手段であるが、計算コストが高く、トレーニングにはO(n^2)の評価が必要なため、実際の利用が限られている。これを解決するために、著者らは不完全U統計を活用したスケーラブルなROC-SVMの変種を開発し、計算の複雑さを大幅に削減することに成功した。また、低ランクカーネル近似を用い、非線形分類への拡張も行い、再現カーネルヒルベルト空間における効率的なトレーニングを実現した。理論的な分析により提案した近似の誤差境界が確立され、合成データセットや実データセットでの実験結果は、提案手法が従来のROC-SVMに匹敵するAUC性能を、著しく短縮されたトレーニング時間で達成できることを示している。