本論文では、人間の道徳的選好が時間とともに変化することを考慮したAIの整合性について議論します。従来のアプローチは静的な道徳的選好を前提としていますが、実際には選好の変動や不安定性が存在し、これがAIの整合性に深刻な課題をもたらしています。特に医療分野などの高リスクな応用において、選好の不一致がシステムの信頼性を危うくする可能性があります。本研究では、腎臓移植患者に関するペアワイズ比較を用いて400人以上の参加者を対象に、時間ごとの応答の変化を調査しました。その結果、同じシナリオに対する応答が異なる時間で6〜20%変わることが示され、この「応答の不安定性」がAIモデルの予測性能に悪影響を与えることが確認されました。したがって、AIの訓練において選好の時間的変化を考慮することが重要であると結論づけられます。